自動車 ソフトウェア OSS

自動車は鉄の塊ではなく、ソフトウェアの塊になります

自動車用のソフトウェアにオープンソースソフトウェアが急速に使われています、というニュースを見ました。

ブラック・ダック・ソフトウェアの記者会見

米国のブラック・ダック・ソフトウェアが2017年6月9日に東京都内で記者会見を開催しました。

CEOのルー・シップリー氏は「自動車業界におけるオープンソースソフトウェア(OSS)の管理と安全確保」について説明しました。

製造業の中でも、ソフトウェア規模の増加が著しい自動車でのOSS採用が拡大。OSSを利用した車載アプリケーションの開発は「セキュリティ対策」と「ライセンス遵守」が大きな課題になると述べました。

自動車に積載されるソフトウェアの規模が増大

現在、自動車に積まれているソフトウェアは年々、爆発的に増大しています。これは、2000年以降の電子化の影響です。
  自動車のソフトウェアの規模
(中型の量産車)
自動車の価値の内、ソフトウェアが占める割合
(%)
1977年 100行程度
現在 1億行程度 40
今後(予想) 2〜3億行 80

今後は自動車を買う際にはソフトウェアを買っているようなものになる

現時点の車のソフトウェア規模1億行は、パソコンOSのWindows7や航空機のボーイング787のそれよりもはるかに大きいものです。

今後も自動運転車などが開発され、さらにソフトウェア規模は増大していくと考えられます。2〜3億行になる頃には、自動車の価値の8割をソフトウェアが占めるようになると予想されています。

これは車を買ったつもりが、実はソフトを買っていた、に変わるということです。

そして自動車ソフトにOSSの採用が拡大

自動車開発におけるソフトウェア比率が高まる中、その再利用性の高さから広く利用されるようになってきているのがオープンソースソフトウェア(OSS)です。

オープンソースソフトウェア(OSS)
一定の条件下(ライセンス)で無償で使用できるソフトウェア。
改良や再配布なども、ライセンスに準じて認められる。

一定の条件はあるものの、無償利用できることもあって、自動車での採用比率が高まり続けています。ブラック・ダック社によると、既に自動車アプリケーションの23%がOSSで占められています。

OSSの利点と課題

OSSの利点(利用拡大理由)
  • 開発コストを削減できる
  • 開発期間も短縮可能
OSSの課題
  • セキュリティ対策
  • ライセンスの遵守

セキュリティ対策

自動運転車等を実現する為には、当然、ソフトウェアにも高度なセキュリティ対策が必要です。また、車の制御はもちろん、車を利用するユーザーのプライバシーなども考慮しなければなりません。

そのような中、OSSの採用比率が高まる一方で、OSSが抱える脆弱性も多数発見されるようになっています。

「2014年以降、OSSの新たな脆弱性が1万以上見つかっている。その一方で、今まで利用してきたOSSに脆弱性があるかどうかを手動で見つけ出すのは大変な作業だ」(ブラック・ダック社)。

「OSSの採用が広がる以上、それらのOSSに含まれる脆弱性もしっかりと管理しなければならない」(ブラック・ダック社)。

特に、OSSに脆弱性が見つかった場合の対処が難しいところです。その場で更新できるなら良いですが、自動車販売店などへ持ち込む必要があったりすると、それだけ対策が遅れたり、放置されたりする恐れがあります。

「自動車メーカーにとって、車載OSSアプリケーションの追跡や管理をいかに対策するか」は特に重要な課題と位置付けている(ブラック・ダック社)。

確かに、セキュリティ管理は大変そうです。しかし、これもおそらく近い将来には、パソコンやスマホのOSやアプリをアップデートするように、自動車のOSやプログラムも、インターネット回線に繋いでアップデートするようになるんでしょうね。これは予想というか、そうしないと多分、自動車用のソフトウェアが運用できなくなってしまうからです。

ライセンスの遵守

ライセンスの管理も課題の1つです。ブラック・ダック社の調査によると、OSSのライセンス違反が広く確認されたそうです。

OSSは無償で使え、改良や再配布なども認められますが、それは全くの無条件ではありません。違反で最も多かったのは「GPL(GNU General Public License)違反」とのことです。

OSSを使うにあたっては、ライセンス遵守が必要です。そうしなければ、企業は訴訟や、知的所有権を損なう重大なリスクにさらされます。

「OSSを含んだ独自コードの所有権を含むライセンスやIP(Intellectual Property)の管理のための適切な対策も必要」(ブラック・ダック社)。

無料で使えるとは言っても、ちゃんと使用条件があるわけですからそれはしっかり守るようにしたいものです。

まとめ

自動車の積載ソフトウェアは爆発的に増加しています。まあ確かに昔は、「機械の塊」だったわけですけど、最近は電子装備も増えましたし、無理もないです。

さらに運転支援とか自動運転車とかになったら、それこそ「パソコンに車輪が付いてる様な感じ」になります。

これからは自動車は「ソフトウェアのカタマリ」ということになりそうです。